万劫末代、永遠の恋  第六話




















その次の週から侑士は忽然と姿を消した。


会いに行きたくても何所に住んでいたか聞いていなかった。

会う手段はいつも、口約束。













景吾は自室の窓からあの裏口を見つめるばかり。

「景吾…」

「なぁ、俺…何か悪い事でも言っちまったのか?」

「そんなこと絶対にないっスよ」

リョーマの小さな腕に抱き締められ、景吾は涙が出そうだった。

侑士と会えなくなってからあまり元気のない景吾を心配して入れ替わり立ち代り遊女達は景吾の部屋を訪れた。

「景ーっ!入るなぁ!」

声と同時に襖が開かれた。

ひょい、と姿を現したのは雅治だった。

ズカズカと部屋に入って景吾の座っている布団の横に自分も座る。

「雅さん、返事してないのに開けないで下さいよ」

「えーじゃろ?俺と景の仲なんじゃしv」

「…どういう仲っスか」

リョーマの咎めも聞かず、雅治は楽しそうに笑う。

雅治の明るい雰囲気に景吾も心を少し浮かせた。

「あ、皆からお見舞い預かって来たんじゃけど…。享は焼鳥、司は漬物で周からは林檎…皆食べ物なんじゃけど…食
べれるかぁ?」

「あぁ、後でゆっくりと食べさせてもらうから…」

にこ、と笑う景吾だったがやはりどことなく憂いを帯びていて…。

けれどもようやく笑った景吾にほっとした。

あの夜、侑士の事について口を出してからずっと雅治は後悔していた。

もしかして、あのせいで侑士は来なくなったんじゃないか、と。

「ま、食べれんかったら俺が全部食べてあげるから安心しんしゃいv」

「…アンタは悩みなんてなさそうっスよね」

「うっさい、こんガキっ!」

ぼそ、と小声で非難したリョーマに雅治は拳骨を食らわせる。

あまりの痛さに涙目になりながら抗議するリョーマの頭を片手で抑えこむ。

そして、急に深刻な表情をして景吾を見た。

「なぁ景。身請けの話が来とるって本当なんか?」

雅治の言葉に腕の中で暴れていたリョーマも動きをピタリと止めた。

景吾は静かに微笑む。

「あぁ…本当だ」

「…当然断わるんじゃろ?」

雅治の手が景吾の肩に触れる。

震えているのは、雅治か、景吾か…。

「…いや、俺はこの話を受ける」

小さく、けれどもはっきり紡がれた言葉にリョーマは目を見開く。

そしてその瞳は悲しげに揺れる。

景吾の顔から耐えれず視線を外した。

「それで…景吾は本当に良いの?」

腿の上でぐっと手を握る手が痛々しい。

きっと、赤く、爪の跡がついているだろう。

その震える拳を景吾はそっと両手で包み込む。

前を見据え…。

「このままここに居ても、俺はずっと侑士の事を想い続ける。それは絶対に変わらないんだ。…俺がこんな状態のま
まじゃ店にも迷惑掛けちまうだろ?」

苦笑いをし、ゆっくりと窓の外を見る。

侑士と毎週会っていた、あの裏口…。

「この窓からあそこを見続けて侑士の事を毎日考えてる。会えもしないのに…。それだったらいっそ、全く違う土地に
行って全部忘れたいんだ…」

そこまで言って景吾は二人を見る。

「お前等と会えなくなるのは辛いけどな…」

無理矢理笑顔を作ろうとして、やめた。

今更作った笑顔を見せても付き合いの長い彼等には無意味だろう。

リョーマの大きな瞳が濡れている事に気がついたが、心の内に仕舞った。

「雅…リョーマの事、頼むぜ」

「…あぁ任せんしゃい」

「じゃあ…一応身支度しろって言われてるから」

「いつ、ここを出るんじゃ?」

「…三日後には、って」

「そ、っか…」

それだけ聞くと雅治は立ち上がる。

隣で俯いているリョーマを促し、立たせると部屋を出ていった。

瞬間、一度だけ振りかえっただけで。

二人が出ていった後、ゆっくりと景吾は身支度を整え始めた。

沢山ある着物や簪、その他色々。

数点だけ持って行って後は他の遊女に譲るつもり。

きっと、喜んでくれるだろう。

この部屋に次、誰が来ても良いように。

次々と部屋の荷物を片付けて行く。






























最後には、何も残らない。


ここに景吾が居たという証拠さえ、無くして。







一緒に、俺も消えてしまえればどれだけ良いか……







もう外では既に、太陽が橙に染まり沈んでいく。


その、瞬間。























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●あとがき

み、短い…;;
とりあえずようやくラストに近づいてきましたー!というか次でラストになる筈です。…多分。
遊女達の名前と食べ物は…まぁ、わかりますよね?(笑)
自分好みで勝手に入れてみました。