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万劫末代、永遠の恋 第四話 部屋に戻った景吾は敷いたままにしてあった布団の上に倒れこんだ。 頬が熱い。 伝えてしまった。 10年以上もずっと想い続けてきた。 そして、隠していた。 久々に会った彼がずいぶんと男らしく格好良かったからか。 それとも、自分も祭りの雰囲気に当てられてしまったのか。 どっちにしろ、口から出てしまった言葉を戻せるわけがない。 「ねぇ、景吾はあの男が好きなの?」 布団の横にちょん、と座り尋ねてきたのはリョーマ。 もちろん景吾と一緒に居た彼も十数年越しの告白を聞いていた。 「…あぁ」 今更隠す必要もなく景吾は顔を上げて答える。 「何で返事聞かないんスか?」 「こんな…俺なんて受け入れて貰えるわけがねぇんだよ」 男の匂いが残る布団に顔を埋め自分を嘲笑う。 侑士は「汚くない」と言ってくれた。 だが景吾には同情としか捕らえれなかった。 こんな自分を侑士が愛してくれるわけがないんだ。 性欲の対象、人形。 「告白したのはつい、って言うか…。自己満足、みたいなものだったのかもな」 小さな手が景吾の髪を梳く様に撫でてくる。 「俺は恋なんてしたことないからわかんないよ、景吾の気持ち…」 申し訳なさそうに呟くと、頭の上に被っていた面を手に持ち立ち上がる。 「…しばらく、一人になる?」 「あぁ…頼む」 「じゃあ俺、皆のとこ行ってますんで」 そう告げるとリョーマは仲間の童女の居る一階の部屋へと駆け降りて行った。 暗い部屋に残された景吾は一人侑士の事を想いながらゆっくりと目を閉じた。 夜、いつもの事ながら茶屋は多いに賑わっていた。 宴には十数人の男達と遊女も同じだけの数。 その中に景吾は居た。 彼等は結構羽振りの良い客らしいが景吾には全くと言って良いほど興味がなかった。 先ほどから晩酌をしたり、三味線を弾いたり…。 表面上は微笑を浮かべているが。 ーどうせこの後は、この中の一人としなきゃいけねぇんだろ…。 初めて男に抱かれた時からもう数年が経つ。 しかしどうしても慣れない。 気持ちが良いものでは決してない。 それも、自分には想い続けてきた人が居るのだ。 なのに何故好きでもない奴に抱かれないといけないのか。 侑士に再会した事で景吾にはここに来た頃の疑問を再び持ち始める。 ー…同じ男でも侑士になら、抱かれても良いのに。 例えそれが報われない願いだとしても。 そう思わずにはいられない。 気分が沈んできた時、酒を運んでいたリョーマが近寄ってくる。 周りには聞えないように、小さい声で。 景吾だけに囁く。 「ねぇ、あの人…裏口に来てた」 途端、景吾は思わず立ち上がって襖を開ける。 「景、何処に行くというのだ?」 酒に息を荒くした客に腕を掴まれる。 「…少し酔ってしまったみたいで、頭を冷やして参ります」 やんわりと客の手を自分の腕から離させ、にっこりと微笑んで外へ出る。 襖を閉め、急いで裏口へと向う。 見つからないよう、足音を忍ばせながら。 「景吾…」 立て付けの悪い戸を開ければそこに侑士が立っていた。 慌てて駆け寄り自分より高い位置にある目を見上げる。 「どうしたんだ…?」 「先日の、お礼言おうと思ぅて…」 「わざわざ…それを?」 「ん、ありがとな」 にこ、と微笑まれると思わず顔が赤くなる。 この闇の中、気付かないとは思うが…。 「俺は良くわかんねぇけど…本当にあれ、お金になるのか?学校ってすごい高いって聞いたけど…」 景吾は外の世界をよく知らない。 だから大体の知識は客から仕入れる。 いつだかの客が言っていた。 学校に行くにはたくさんお金が必要だ、と。 たくさん、とはどれぐらいか景吾は知らない。 でも、庶民には到底無理なのだと言う事は聞かされた。 「今、客の相手してるから取りに行けなくて、これしかねぇけど…」 景吾の髪をより美しく際立たせている瑠璃と金で装飾が施されている簪をそっと抜き取る。 そしてそれを侑士の手を取り、彼の掌の上へと置いた。 「…ありがとな、景吾」 今度は何も言わず受け取ってくれた事に景吾は嬉しそうに笑う。 しかし、侑士の目はどこか哀しそうで…。 ー…どう、して? 「…今度着物とかもやるから」 「えぇんか?」 「あぁ。むしろ有り過ぎて困ってんだよ」 客が要らないのに贈りつけてくるから。 景吾には関係のない話だが、とても…高価な。 「なぁ、来週もまた…その次の週も…この時間に来て欲しい」 お前さえ良ければ、だけど…。 不安そうに見上げる景吾を一撫でする。 「ん、えぇよ」 「本当か?ありがとう…侑士」 ほっ、と胸を撫で下ろしにこりと侑士を見上げる。 「なぁ…景吾、あんな…俺この前の……」 侑士が景吾の瞳を見つめ、何か言おうと口を開く。 その時、店の中…何処か遠くで“景”と呼ぶ声が聞えた。 声に侑士は口を閉ざし、景吾ははっとする。 「あ、…もう行かねぇと」 「…そないか」 「じゃあ、またな」 店の中に慌てて戻って行った景吾を侑士は簪を握り締めて哀しそうな目で見つめていた。 「旦那様…景はここです」 「景、そこに居たのか。随分探したぞ……おや?簪が無いようだが」 「ぇ…あぁ、どこかで、落としたみたいですね」 「ならば今度景に似合う簪を一流の職人に拵えさせよう。無くしたものは気にするな。私が新しく贈ってあげるから」 男は景の髪に唇を落とし、頬を両手で包み込む。 男の目をじ、と見つめて唇の端を軽く吊り上げる。 「ありがとうございます。旦那様…」 景吾は腕を男の背に回し、甘えるように抱きついた。 ただ、心だけは真っ暗。 瞳も深く、沈んだ蒼だった…。 続 ------------------------------------------------------- ●あとがき 進んでるんだか進んでないんだかで四話目です。 あぁ、忍足が出張ってくれない。(涙) こんなんでも忍跡です! 他の男と甘々してる跡部様は何だかなぁ、と思いつつ; 遊女だから仕方ないよな。 戻 |