万劫末代、永遠の恋  第弐話



















茶屋の近くの神社とその界隈で祭りがある、とそうリョーマが朝から騒いでいる。

リョーマは祭りと言ったものに行った事がないらしい。

しかし遊女はこういう祭りに関係なく仕事がある。

「リョーマ、行きたいか?」

そう、尋ねれば申し訳そうに俯く。

「…でも景吾は仕事あるでしょ」

二人はお互いの名を源氏名ではなく本名で呼び合う。

それは景吾が言い出した事。

「景姉様」と呼ばれるのが気恥ずかしい事も理由の一つだったし、本当にリョーマの事を弟として接したいと言う事も
また、理由だった。

思えばリョーマがここに来て二年余り経つが一緒に祭りなど行った事がなかった。

それどころか、二人で外を出歩く事も滅多になかったように思う。

頭に過るのは朝から楽しそうに祭りの話をしていたリョーマ。



ー…仕方ねぇな。



「今日一日ぐらい休んでも構わねぇよ」

「本当っ!?」

ぱっ、と顔を上げたリョーマの目はキラキラと輝いているようだ。

コロコロ変わる表情はずっと見ていても飽きないな、と思う。

「あぁ、店の主人に伝えてきてくれるか」

「っス!」

嬉しそうに返事をするとリョーマはこの茶屋の主人のところまで走って行った。

「…祭り、か」

ここに来る前、景吾も何度か祭りに行った事があった。

大好きだった両親とも行ったし…。



そう、…アイツとも。








薄暗くなってきた空。

何処からか太鼓囃子の音が聞えてきたような気がした。





























「景吾っ!こっちこっち!!」

リョーマの声変わり前の高い声が祭りのおとに掻き消されていく。

初めての祭りにリョーマは落ちつかず、面白そうに四方八方を見渡している。

その足はある点で止まったり、かと思えば急に走り出したりと景吾にしてみればリョーマの姿を見失なわないように
するのが精一杯だ。

「おい、リョーマ。少しは落ち着け」

ようやく追いついた景吾はひょい、とリョーマの着物の裾を引いて足を止める。

どこでも勝手に行って迷子になられても困る。

「…あ!あそこにあるお面、買っても良いっスか?」

リョーマが指差す方向を見ればバランス良く並べられているお面があった。

「あんなもの、欲しいのか?」

「っス。ちょっと並んで買ってきますね!」

そう言うと景吾の返事もまたずにリョーマはお面の屋台の方に駆けて行ってしまった。









一人残された景吾は近くにあった大きな石に腰掛ける。



ー本当、懐かしいな…





昔、祭りでもどこでも一緒に行った。


懐かしい、人。



そして…。













人の波が景吾の前を過ぎて行く。

だから出会ったのは偶然…。


いや、運命だったのかもしれない……。












「け、…ぇご」















祭りのざわめきの中、妙にその声だけがはっきりと聞こえた。



懐かしい、そう。


今、想っていた人の…。


昔の、あの頃の思い出の…。




そんな香り。











驚いて声の先を視線で辿る。


蒼い瞳が、捕らえた。











その、闇の色を。














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●あとがき

二話目なのに忍足が出ないです;;
リョーマ、出張りすぎ;
ちょっと長くなりそうだったんで分けたんですけど…短過ぎました。(反省)
次回こそ忍足でますっ!;