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CROSS... ~7~ 跡部の症状は出血量は多かったが傷自体は大したことはなかった。 けれども全身を打ちつけ頭を強打した為、3日たった今も意識は戻っていない。 跡部の両親は昨日仕事の関係で再び飛行機で旅立った。 病室には毎日のように大勢が見舞いに来た。 花や果物で溢れかえった病室を、跡部はまだ見られない。 一刻も早く、目が覚めてくれる事を祈るばかりだった。 「今日の部活はここまでだ」 「はいっ!ありがとうございました!」 一年生はネットを片し始め、二年生と三年生は部室に戻っていった。 既に太陽は地平線よりも下へと、帰ろうとしているところ。 空が、雲が、不思議なほど綺麗な紅に染まっている。 正レギュラー達も専用部室に戻り、着替えを始める。 「…なぁ、侑士は今日も病院に行ってるのか?」 向日が誰に聞くでもなく、呟く。 鳳は困ったように笑いながら荷物を片付ける。 「仕方ないですよ」 ジーッとファスナーを締めながら、口を開く。 「でも、まさか…二人が付き合ってたなんて……全く気付かなかったです」 宍戸はあの後、全く状況の理解できていなかったメンバーに自分の知ったすべてを話した。 ここ最近、跡部の様子がおかしかった事。 原因は忍足だった事。 そして、二人が付き合っていた事…。 あの事故の日から忍足は学校に来なくなった。 ずっと、病院に居るらしい。 特別に許可を貰い、夜もベッドの傍らで跡部を見守っている。 ずっと病院の白いベッドで死んだように眠り続ける跡部の手を握り続けていた。 ただひたすら、愛しい人が目覚めるのを待っている。 「俺達も…気付いてあげてたら、こうならなかったんだよね」 ジローの一言に、皆黙り込んでしまう。 重苦しい雰囲気の中、宍戸は吐き出すように言った。 「跡部にとって、俺達ってそんなに頼りなかったのか?相談するに値しなかったのか…?もっと、信じてくれて良かっ たのによ…」 皆が、小さく頷いた。 仲間なんだから、相談して欲しかった。 友達なんだから、信じて欲しかった。 大切な人だから、助けてあげたかった。 宍戸が鞄を持って部室を出た。 その後をジローは慌てて追った。 「宍戸っ!今からお見舞い行くんだよね…?」 「…あぁ」 「……宍戸も、自分を責めないでね?」 ジローの言葉に宍戸は奥歯を噛み締めた。 そうだ…。 俺は跡部と一緒に居ながら…ただ、跡部が跳ねられる様子を呆然と見ていただけだった。 何も出来なかった。 そして。 一番に駆け寄ったのは、他ならぬ忍足で…。 ー殴られるべきなのは、俺もだったんだ… 「しーしーどっ!!」 ペチ、と両頬に軽く手の当る感触。 自分の思考に嵌まっていた宍戸は驚いて前を見る。 ジローがにっこりと笑っていた。 「そんな顔してないで…跡部が起きてた時に「激ダサな顔だな」って言われちゃうよ?」 からかう様に言ったジローの言葉に宍戸は思わず笑った。 心が、少し軽くなった。 「…そうだな。アイツ、何かと口悪いしよー!」 「そうそう。…俺は跡部が起きた時に二人が喧嘩しないように、ちゃんとついててあげないとね」 あと…。 「宍戸と忍足も、喧嘩しないようにね?昨日の修羅場を見たら、放って置けなくなったよ」 そうジローが言えば、宍戸は唇を尖らせる。 「もうしねーよ」 「どうかなー?宍戸ってさ、昔から跡部の事になるとすぐにカッとしちゃうでしょ?」 ー好きなんだよねぇ…、跡部の事。 でも、口には決してその事は出さない。 きっと拗ねるから。 ムキになって反論するから。 本当は、誰よりも一番に跡部の事を考えて居るくせに…。 チッ、と軽く舌打して宍戸が足を先程よりも早く前に出す。 「ほらっ!早くしねぇと面会時間終わっちまうぜ!」 「……今から行ってもどうせ数分しか居れないだろうけどね」 「畜生…、俺も特別に夜間面会の許可貰おうかな」 「それは忍足と喧嘩しちゃうから絶対駄目っ!」 何気ない会話をしながらジローはその後を置いてかれないように歩く。 悔しいほど紅に染まっていた空は、今は薄紫色。 二人の頭上には一番星が薄っすら輝いていた。 白い病室で、忍足はひたすら跡部の手を握っていた。 窓の外の空は薄紫の色に綺麗に染まっていた。 一般の面会時間も終わりに近づき、徐々に病院内は静かになっていった。 忍足は、静かに眠る恋人の額にキスを落とした。 「なぁ…景吾、早く起きてや?」 言いたい事が、あるから。 繋がっている左手を強く握る。 血液は流れ続ける。 呼吸もしている。 けれども目が開かない。 現実から、目を背けたがっているみたいで…。 全部、自分のせい…。 「景吾、早ぉ起きてや。…言いたい事、たくさんあるんや」 祈るように、今度は唇を重ねた。 侑士…ごめんな。 俺が、弱かったから…。 俺が口に出していれば、こんな事にはならなかったんだよな。 お前が悲しむのは、俺のせい。 ごめん…。 素直じゃなくて、本当に……ごめんなさい。 続 ----------------------------------------------------------------------- ●あとがき● と、とりあえずこんな展開になってしまいました…。 一応跡部には生きててもらいました。 これで跡部が死んでいたら忍足まで死んじゃいそうですもんね(苦笑) いまだにハッピーエンドにするかバッドエンドにするかで悩み中; 異界が初めに考えていたストーリーとはだいぶかけ離れてきました。 真っ暗闇を光もなしに突き進んでいるような、そんな感じで書いているお話ですがどうか最後まで見守ってやってください。 ![]() |