CROSS... ~6~




















緊急手術室に入れられた跡部。

赤のランプが点灯する。

薄暗い廊下に光るそれは血のようでとても気味が悪く感じた。

部屋の前には忍足と宍戸の二人。

先程宍戸は電話で跡部の家と監督、それと正レギュラー達にも連絡をした。

跡部の両親は現在海外に居るので性格には執事の方に、だが。

それでもあの両親のことだ。

今日中にでも自家用機を飛ばして来るだろうと宍戸は思っていた。

皆、何だかんだと言って跡部が好きだから。

きっとすぐに飛んでくるだろう。

そろそろここに来る筈…。

けれどもその前に。

宍戸には彼等が来る前に聞くべき事があった。

自分の勘違いでなければ、いや…確信はある。

そして、口を開く。


「…忍足、さっき跡部の事“景吾”って呼んだよな」


いつもは、名字で呼んでたクセに…。

忍足からの返事はない。

廊下の椅子に座ったままピクリともしない。



「お前…跡部と付き合ってるんだろ」


「…そうやよ。結構前からやけど」



小さな声だったが、宍戸までは十分届いた。

そして、ふつふつとした憎しみが再び沸いてくる。

何時の間にか遠い距離になった跡部と自分。

昔は一番に頼ってくれた彼が、今は誰を必要としているのかも。

だからこそ、許せなかった。

「ここ最近、跡部の様子がおかしかった事に…気付いてたか?」

宍戸の怒りを含んだ声が廊下に響いた。

忍足の肩が揺れ、ようやく顔を上げる。

重なった視線。

その忍足の瞳が一瞬、輝いた気がした。

「…それが本当なら、多分俺のせいやね」

忍足の唇が薄っすらと弧を描いた。

一段と宍戸の視線が鋭くなる。

グッ、と握り締められた宍戸の拳が痛々しい。

「どうして…!!」







「“嫉妬”……」








そう、それだけ…。

些細な事なんだ。







「景吾にな…ちょっと“嫉妬”させたかったんや」

「何…」

「俺ばっかり景吾の事「好き」や言うて嫉妬して心を支配されて……不公平やんか。せやから…」


パァン…!


乾いた音が鳴る。

数瞬遅れ、痛み出す頬。

恐らく真っ赤に腫れあがっているのだろう。

「ふざけんな!!お前、跡部の何処見てたんだ…!あれが「ちょっと“嫉妬”」させただけなのか!?」

ずっと分からなかった。

でも、今は分かる。

いつからだったのだろうか…。

跡部が哀しそうに俯いてばかりになった。

無理して笑って…。

震える体を、唇を噛んで拳を握って耐えていた。

いつも泣きそうだった。

それは全部。

忍足を見て居る時だった。


ー大丈夫…


跡部のその言葉は、俺達に助けて欲しかったんじゃない。

他の誰でもない、忍足を待っていた。

なのに…。

「気付かなかったのか!?あんなに苦しそうだったのに…!」

強がっては居るけど、長年の付き合いで分かっている。

とても心の弱い人間なのだと。

本当に大切な人に程、意地っ張りになっていく。

それでも、俺達は気付いてあげなくちゃいけなかった。

恋人であった忍足ならば、親友よりも大切な存在になってしまった忍足は…。

「なぁ、なんとか言えよっ!!忍足!!」

叫んだ声が虚しく廊下に響いた。

忍足は下を向いて、そのまま一言だけ。



「宍戸には関係ないやろ…」



「……っ、テメェ!!」

再び宍戸が拳を握り締め、腕を振り上げた。

「宍戸…っ!!」

聞える複数の足音と叫び声。

後ろからの衝撃。

振り上げた腕に纏わりつくもう一本の…。

「ジロー…!?」

「ねぇ、何やってるの!?跡部が…っ、大変な時に!」

ジローの真剣な声に宍戸はハッとする。

けれども、怒りはまだ収まらない。

「離せ!コイツのせいなんだ!!全部、忍足が…!!」



ーコイツのせいで、跡部が…!!



頭の中はそれでいっぱいだった。

大切な親友を傷つけた忍足が、ただひたすら憎かった。

「ちょ……宍戸!落ち着けって!!」

「宍戸先輩っ!」

その様子を呆然と眺めていた他のメンバーはようやく宍戸を宥めにかかる。

「……忍足先輩も、どうしたんで、す…か…」

鳳は俯いたままの忍足の前にしゃがみ込み、顔を覗き込んだ。

とたん、驚きに目を丸くした。

そしてそのまま、言葉を放つ。

「…宍戸さん、忍足先輩の気持ちも考えてあげてください……」

先程来たばかりの鳳には状況が全く理解出来ていなかった。

けれども、鳳には忍足が殴らようとする理由も見当たらなかった。

…見た限りでは。

鳳にそう言われ、宍戸はようやく忍足の表情をまともに見た。

「忍足、…お前……」

泣いていた。

口の端から血が流れるほどに強く唇を噛み締めて、嗚咽と苦しみに耐えていた。

闇夜を思わせる瞳の色は全く何も映してはいない。

ただ、雫を零し続けるだけ。

悲痛なその表情をみて、宍戸は握り締めていた拳を解いた。

「…悪ぃ、忍足」

一瞬前までの憎と怒はすっと消えた。

そのまま、宍戸はその場に座り込む。

忍足は自虐的な笑みを浮かべた。

「いや、確かに殴られてもしゃあないんや…俺は」

その言葉を最後に、皆黙り込む。

何も言えずに、ただ赤のランプを見つめるだけ。

とにかく今は、跡部が無事である事を祈るだけだ。








そして、赤が、消えた…。



























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●あとがき●

久しぶりどころじゃない更新です(死)
展開書いてあったメモ無くしちゃったんで…仕方なく思い出して書いてました。
書いている本人、展開どうしたらいいのかわかんない…(馬鹿)
にしても暗い。
話が暗すぎる…!!
悲恋…にはしないと思われますが。
そして相変わらず宍戸さんが出張ってます。
…すこし宍→跡っぽい(爆)