CROSS... ~4~




















「なぁ跡部。ちょっと明日、買い物に付き合ってくれねぇか?」


金曜日の部活終了後。

宍戸は手の平をあわせ、軽く頭を下げた。

何でももうすぐ妹の誕生日だそうで、一人で女ばっかりの雑貨屋に行くのは恥ずかしいという理由からだった。

初め跡部は全くもって相手にしていなかった。

自分だってそんな女の子が好き好んで行くような店に男二人で行く気のは恥ずかしい。

しかし昔からの親友である宍戸がここまで粘り強く頼みこんでくる姿を見て、見捨てるのも気が引けた。

「……明日の10時、お前の家まで行く。ちゃんと準備しとけよ」

「マジ!?サンキュー、跡部!!」

そして結局はこの幼馴染の言う事を聞いてしまうのだ。

その時跡部はじっ、と送られていた視線に気付く事はなかった。
































翌日。

大勢の客で賑わう、お洒落な雰囲気の雑貨屋。

女性向な商品を多く扱っている店なだけあって、大半はやはり女性で男性もちらほらいるが、それはカップルで来て
いるのであって…。

「…やっぱり俺等、浮いてるよな」

「今更な事言うな、バーカ」

そんな場所で男が二人、可愛らしいマグカップを片手に話し合っているのは奇妙な図だったりする。

「で、それで良いのかよ?」

「ん〜…今まで見た中ではこれが一番パッとしてんだよ」

今宍戸が手にしてるのは薄いオレンジのチェック模様に所々ピンクで描かれた花が愛らしいマグカップ。

それを手に数点見た後、結局宍戸はそれをレジに持って行った。

跡部はその様子を少し離れたところから見ていた。







付き合い始めの頃は忍足と二人で休日に出掛けたりもしていた。


こういう風に服や雑貨を見て回ったりしたこともあったし、ストリートテニス場に行ったりもしていた。

とても、楽しかった日々。

目を閉じればこんなにも鮮明に残っているというのに。
















「待たせたなって……跡部?」

袋を持って戻ってきた宍戸は跡部の表情を見て首を傾げる。

一瞬、泣いているように見えたから…。

けれども目が合ったときにはもういつもの跡部になっていた。

「ったく、レジぐらいさっさと済ませろよ」

「だってよーラッピングはしてもらわねぇと」

「ッチ、じゃあ昼飯はお前の奢りな」

「はぁ!?ふざけた事いうんじゃねぇよ!!」

「プレゼント選ぶの、協力してやっただろ」

「適当に相槌打ってただけだろ!」

ギャーギャー言いながら大通りを歩いていく。

人通りの多い土曜の昼に騒ぐ二人はとても目立っている。

しかし本人達はまったく気にしていない様子で。






「あれ?跡部と宍戸やん。…二人で仲良く買い物か?」






後ろから聞えた聞き慣れた声に跡部はビク、と肩を揺らした。

「え、あ…忍足」

振り返れば思った通りの顔。

ただ、予想と違ったのは…。

「その子…彼女か?」

忍足の傍らに佇んでいる一回り小さな女。

年は跡部達よりも2・3歳上、といったところか。



ツキン…、とまた跡部の心臓が痛む。

思わず服の上からぐっと抑える。



「自分ら男二人で何楽しそうにしとるんや。寂しい奴等やなー」

「うっせぇよ!」

宍戸はムキになって反論しているが跡部はそれどころではなかった。



ーこの前俺が誘った時は「用事がある」っていったクセに



用事とはこの女とのデートだったのだろうか。

酷く悔しい。

けれども、そんなこと言えない。

きっと口にすれば忍足に嫌がられる。

世間体を気にするから…。



















「ほな、そろそろ俺等は行くわ」

にっこり笑い、隣の女の肩を抱く。


やめろ、声にならない感情が騒ぐ。


「二人もさっさとえぇ女見つけて付き合ぃ?男同士居てもつまらんで」



ー…つまらない、か



今までも、そうだったのだろうか。

あの、一緒に居た時の笑顔は嘘…?









「跡部、俺等も行くぞ」

歩き出した忍足達をじっと見つめていた跡部は宍戸に促される。

けれどもどうしても未練がましく目で追ってしまう。






その時、跡部の視界が捕らえた。






横断歩道を渡っている忍足に一台の車が突っ込んできて…。


二人は気付かない。

思わず、跡部は駆け出した。





























「ッ、侑士……!!」



























忍足と女の背を思いきり押す。

やっと気付いた、車の存在。


そして跡部…。












鈍い音。


体が宙を舞う。


紅が、彩り……。






全身を襲う痛みに跡部は意識を飛ばす。















瞬間。


最後に、どこか遠くで声が聞えた。



























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●あとがき●

忍足が最低っぽい奴に…っ!(今更)
ごめんなさい、忍足ファンの皆様。
これでも愛情たっぷりですので;(マジです)
つか景吾が…;;
色々とごめんなさいな話だなぁ、これ…。