CROSS... ~3~




















その日もまた忍足は部室の外に女を待たせていた。

けれどもテニス部メンバーにとってこれはいつもの事。

しかも毎回女が変わっている。

忍足のダブルスパートナーである向日にとっては「ま、侑士はモテるし。休み時間だってすげー数の女に囲まれてる
んだぜ」…らしいが。















「忍足ー、今日も女待たせてんのかよ?」

「やるねー。しかもあの子、1年で一番可愛いって評判の子じゃないか」

「たきぃ、くわC−!!」

わいわい騒ぐメンバーとは打って変わり跡部の表情は重く暗いものだった。

テニス部部員は跡部と忍足が付き合っている事を知らない。

まさか、付き合っているとも思っていないだろう。

忍足は毎日のように女と一緒に居るし、跡部は跡部でそれを見て見ぬ振りをしている。

「ほな、お先に失礼するなぁ…長い事待たせとるんは可哀想やし」

にこやかに手を振って部室を出た忍足に向日や宍戸が「厭味かよ!?」などとギャーギャー騒いでいる。

明るい賑やかな雰囲気の中、跡部だけが俯き拳を固く握り締めて自分の中で溢れ出そうとしている感情を必死に押
し殺していた。
































賑やかだった部室は徐々に人が減り、ついに跡部一人だけになってしまった。

部長として部誌を書き鍵の管理をしないといけないため、跡部は最後まで残っていなければならない。

ぎっしりと書きこまれた部誌を閉じ、ソファに凭れ掛かる。








たまに思う。

何故自分は男に生まれたのだろう、と。

女に生まれてきたなら、もう少し素直になれたのに。

女に生まれてきたなら、忍足ももっと自分を見てくれたかもしれないのに…。





でもそれは、どう足掻いても変えられない。


だからこうして一人、感情を押しつける。


黙って、耐え続ける。













全てを曝け出す勇気はない。


そんな事をすれば、忍足に嫌われてしまうかもしれない。



それだけは、絶対に嫌だった。












































一人、暗い道を歩く。

風が冷たく肌に突き刺さる。



付き合って間もない頃、二人は一緒に帰った。

忍足はわざわざ遠回りをして、跡部を家まで送り届けた。

その時も冷たい北風が吹いていた。

寒い、そう呟いた跡部の手を忍足はそっと握って微笑みかけた。







それが、もう…今では夢だったよう。




どこで何を間違ったのか。


わからない、全く。


冷たくなった手を握り合わせ、そっと息を吹きかけた。






「侑士……」





















声は暗い夜空の空気に包まれ、誰にも聞こえることなく消えていった。



























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●あとがき●

進んだようで進んでないようで。一話一話がかなり短い気がします;
でもくっつけるとなると長過ぎる気もしないでも…ないかな?(どっちだ)
そろそろ展開を進めて行きたいです。