悲劇の朝食









とある日の朝。

忍足侑士は珍しく朝寝坊をしてしまった。



「ヤバ…俺としたことが、寝過ごしてもうた;」

忍足はすぐさま起き上がりあたりを見渡した。

「…って、景ちゃんはどこや?」

たしかに寝るときには自分の隣にいたはずの跡部はこの部屋にはいなかった。

「どこ行ったんやろ…景ちゃん」

忍足はベッドから降り、部屋を後にした。

廊下を少し歩くとすぐにあるキッチンから人が動いている気配がした。

忍足は大方跡部がお腹をすかせて冷蔵庫を漁っているのだろうと思い、ドアを開けた。














その瞬間……。


忍足は目の前が真っ暗になった。









そして広がるなにやら焦げ臭いにおい…。





「なんやのっ、これはっ!!;」

慌てて忍足はキッチンの中に入る。

キッチンの中はもっと酷かった。

ガラスの破片はそこら中に散乱し、何かの肉片らしきもの、血痕らしきものが部
屋中に飛び散っていた。

まさに地獄絵図だ。






すると…。

「おはよう、忍足。」

真っ黒い煙の中から跡部が姿を現した。

「景ちゃんっ!?何やの、この状況は!!」

訪ねる忍足の慌てようとは対象的に跡部はごく当たり前のように言い放った。



「どう見たって料理してたようにしか見えねぇだろうが」









いや、どう見たって大惨事です。

料理をしてたようには見えませんよ、景吾さん?




そんな思いは口に出さずに押しとどめ、とりあえず聞いてみる。

「何作ってたんや?」

「目玉焼きだ!!」







……目玉焼きを作っててどうしたらこんな風になるのでしょう?







とりあえず、飛び散っているモノを掃除するため、忍足は掃除機で皿の欠片やら肉片やらを吸い込みながら聞いてみ
た。

「なんで目玉焼きなんか作ったん?」

「…お前が起きなかったから、たまには俺が代わりに作ってやろうと思ったんだよ」

「俺の為なんか?」

「…悪いかよ//」

ふいっ、と頬をうっすら染めて跡部は視線をそらした。






…襲ってもいいですか?(おい)






かっ…カワエエッ!!

いや、景ちゃんはいっつもカワエエけどなっ!!(惚気るな)

「そうやったんか。…ありがとなv」

嬉しそうににっこりと微笑む忍足に跡部の表情にも自然と笑みが浮かんだ。

「なら朝飯食うか?」

跡部の頭を撫でながら言う。

「じゃあ俺様が全部準備してやるから向こうで座って待ってろ」

それだけ言うと跡部は再び地獄……キッチンに向かっていった。(忍足が掃除機で色々(そう色々…)と吸い込んだた
め大分元通りになってはいるが…)

自分のために一生懸命やっている跡部を忍足は嬉しく思いながらテーブルへと向かった。







しばらくして跡部がお盆に料理を乗せて歩いてきた。

「ほらよ」










テーブルの上に置かれたのは…………




「……景ちゃん」

「ぁんだよ?」

「…コレ何や?」

「どう見たって"目玉焼き"だろ」





皿の上には真っ黒な塊に血のように赤いソースがかか
った物体が乗っていた。









…どないしたら"目玉焼き"がこうなんのや!?


つーか、よぉ見たらこのソース…マジで血やないんかっ!?;







「…ちょっと聞いてええ?」

「?ああ…」

「このソース、なんやの…?」

「あぁ、それか。あまりにも抵抗しやがるから包丁で喉を一突き…」

「何やっとったんっ!?」

平然と話す跡部に忍足の不安はピークに達する。

「だから普通に料理してただけだぜ」

「目玉焼き作るのになんで包丁が出てくるん!?;ってか喉を一突きって……何使うて目玉焼きを作ってん!?;」

「だってこうやって作るもんなんだろ、目玉焼きって」

「こうやってってどうやって作ったんやっ!?;」

「ゴチャゴチャとうるせぇよ」









そうやった………景ちゃんは鉄箱に入れられて育ったんやった!!("鉄"箱入り息子/ぇ)

箱入り息子以上に世間知らずのお坊ちゃまの跡部には世の中の常識は一切通用しないのだ。


今まで一緒に行動して、嫌っちゅーほどわかっとった筈なんに…。








忍足は一人頭を抱えて後悔していた。

「何でもいいから食ってみろよ」

ズイッと皿を忍足の前に差し出す。

ものすごい異臭に忍足は意識を失いそうになり、鼻を手で押さえた。

「どうしたんだ?食わねぇのか?」

テーブルの上の目玉焼き(と跡部は言い張る物体)を見たまま微動だにしない忍足を跡部は首を傾げながら見る。

「あ、あのなぁ〜…景ちゃん。これどう考えたって……」

「…………食べてくれないのか?」

悲しそうに忍足を見つめる跡部。

「お前の為に一生懸命作ってやったんだぜ?」

「せやかて…っ;」

「……ッ、もぅいいっ!!」

そう言うと跡部は泣きそうな表情をし、俯いてしまった。

「景ちゃ…」

「触んなっ!!」

忍足は跡部の肩に触れようとし、手をのばした。

…が、その手は途中で跡部に振り払われてしまった。

その時に見えた、傷だらけの跡部の手……。

昨日の夜にはそんな傷はついていなかった。

きっと朝ご飯を作るという慣れない作業をしたが為についた傷なんだろう。

そう思うと忍足の胸に罪悪感が沸き上がってきた。

「なぁ、景ちゃんが食べさせてくれんか?」

「え…?」

「景ちゃんがあーん、って食べさせてくれるんやったら目玉焼きの美味さも増しそうやしv」

「だって…食べたくないんだろ?」






…その通り。(え)



しかし、あの俺様な跡部が自分の為に怪我をしてまで頑張ってくれたのだ。

「そんなことないで?ムッチャ美味しそうやんか」

跡部の柔らかい髪を撫でながら、もう一度「食べさせて」と頼んだ。

「…仕方ねぇな、食べさせてやるよ」

言葉は乱暴でも、跡部の顔には幸せそうな笑みが浮かんでいる。

そしてフォークを手に取り、目玉焼き(と言い張るもの)を一口サイズに分ける。

フォークを忍足の口の前に恥ずかしそうに差し出す。

「……ぁ、あ〜ん…///」

真っ赤になり、首を傾げながらフォークを差し出す跡部。

もはや忍足は鼻血を堪えるのに必死。

今すぐ(跡部の方を)美味しく食べてしまいたい。

だが、目の前にあるのは目玉焼き(と言い張るもの)。

忍足に押し寄せる恐ろしい臭いと死の予感。

まさに、天国と地獄…である。

「……………あーん…v//;」




そして、忍足は意を決して跡部の差し出すモノを口にした……。

























「あ、跡部だぁ!!おはよ〜★」

「ジロー、起きてるなんて珍しいな」

「エヘヘ〜v…あれ?跡部、忍足は一緒じゃないの〜?」

「アイツ、朝食食い終わった後真っ青になって倒れやがったんだよ」

「うわ〜…大丈夫なの?」

「さあな。一応今日は休ませることにしといた」

「そっかぁ〜…あ、早くしないと1時間目始まっちゃうC〜!!」

「ジロー、…ちゃんと授業中起きてろよ?」

「あはは〜♪ねぇ放課後、忍足のお見舞い行くんでしょ〜?」

「あぁ。帰りに忍足の家寄ってく。…その時にお粥でも作ってやるか」

「忍足ってば、跡部の手料理食べれるなんて羨まC〜!!」






食当たり(?)で寝込んでいる忍足に更なる悲劇が待っている。









〜END〜


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●あとがき●

無駄に跡部が乙部になってしまった…ッ!!;
こんなんでゴメンナサイ m( _ _ ;)m
跡部は鉄箱…むしろ核シェルターに入れられて育ってても可笑しくない位世間知らずだといい。

えっと…これ、下校中の電車の中でコツコツケータイに打ってました。
バッタリ旧友と出会い必死になってケータイ隠したり、賄賂(お菓子)を渡したり…大変だった;
まぁ、公共の場で打ってた私が悪いんですけど;;