出会いの瞬間

















初めて出会ったのは関東大会。

俺は友人に連れられて氷帝学園の試合を見に行っていた。

そん時、俺はまだ1年だったしそれなりには強かったけど、レギュラーじゃなかった。

こっちで有名だったんは幸村、真田、柳…といったところじゃね。

入学した時から奴等は別格じゃった。

でも“彼”は同じ1年だったのにもう正レギュラーで、結構騒がれてもいた見たいじゃ。

情報通の友人が見たかったのはその“彼”。

曰く、「すげー可愛くて強いんだってよ!」らしい。

ぶっちゃけ聞いた時は気にもならんかった。

だってそうじゃろ?

いくら可愛くても男は男。

その“彼”は友人に任せて俺は応援団に居るチアの“女の子”の方ばっかりに気をとられとった。

そしてシングルス3の試合。

いきなりギャラリーが騒ぎ出す。

わけわからんコールまで始まってのぉ…。

隣に居る友人まで「仁王、あの子だよ!可愛くて強い子!」と耳元で叫ぶ。

俺はそんな事よりチアの子見るんに真剣だったんじゃ。

でも、友人は「そんなのより断然あの子のが可愛いぜ!?」っての…。

五月蝿くて仕方ないからしぶしぶ友人の指差す方を見てみたんじゃ。

そしたら……。

「別嬪さんが…輝いちょる」

情けないけど、口から思わず零れ出た最初の言葉がそれだった。

ラケットを持ち、黄色の球を追いかけるその姿さえ愛らしく。

コートを舞う姿は天使のようで…。

それからだ。



俺が“跡部景吾”という人間を意識し始めたのは。


































初めて出会ったのは関東大会。

俺は試合を終え、他のメンバーに囲まれていた。

1年でレギュラーの座を勝ち取り、関東大会のシングルス3に出場。

しかも相手の3年に6−2で勝ったとなれば皆騒ぎ立てるのも当然だった。

皆応援してくれて、自分が勝ったかのように喜んでくれる。

それはとっても嬉しかったが、どうしても俺は一人静かに休みたくなった。

幼馴染のジローに似たのか、木陰で、涼しい、そんな最適な場所で休みたくなった。

皆には適当に「ちょっとそこまで…」なんて行ってさっさと出ていった。

まだ試合中だったけど、優しい先輩達は「疲れてるもんな」と言って許してくれた。

そして見つけた最適の場所。

芝生で、大きな木の下には丁度良い木陰。

そこに俺は座って息を吐いた。

涼しい風が身体にあたる。

その気持ち良さに思わず目を閉じそうになったその時。

「…見つけた、“跡部景吾”」

声が頭上から振りかかった。

気付けば目の前に人の顔があった。

少し、胸が高鳴った。

「……若いのに白髪か?」

気が付けば思わずそんな言葉が口から出た。

思ってたことと、違う。

でも、それでだ。



その時に俺は“仁王雅治”の存在を知ったんだ。



































「初対面の相手に“白髪”はないじゃろー?」

仁王は苦笑いしながら跡部の横に腰掛けた。

人工的に作られたとしか思えないその髪を跡部はじっと眺めた。

「年とれば自然に白くなるだろ?態々今から白くしなくてもいいじゃねぇか」

その言葉に思わず仁王は目を丸くさせた。

跡部の見た目と言葉遣いの違いに驚いたのだ。

それでも一瞬の事で、仁王は笑いながら言った。

「これなぁ、一応“銀髪”のつもりなんじゃよ?」

「嘘吐け。絶対白髪だろ」

確かに仁王の髪の色は光の具合や見方によれば銀には見えなかった。

それでも今までここまで「白髪」と言い切り連呼する者はいなかった。

仁王はますます跡部に興味を惹かれた。

「なぁ、さっきそこで試合しとったじゃろ?凄いのぉ、同じ1年なんに」

「別に…それほどでもねぇよ」

素っ気無い言葉だが、跡部の頬は薄っすらと桃に染まっている。

「…お前は?そのジャージ、立海だろ」

「俺は残念じゃけど平部員じゃ」

肩を竦め、仁王はわざとらしく眉を八の字にさせる。

ふうん?と跡部は呟き視線を空に移動させた。

それと一緒に仁王も視線を上へと上げる。

「なぁ、俺…もっと強くなりたいんじゃよ」

ふと、仁王が話し始めた。

「こっちに同じ1年で…幸村とか真田…あと柳が居るんじゃ。そいつらと互角、それ以上になれるぐらいまで強くなりた
いと思うとる」

跡部は視線を空から外さないまま。

それでも音は仁王の言葉を一字一句逃さぬよう聞いていた。

「今日跡部の試合見て…凄いなぁって思ったんじゃ。…正直羨ましい」

「…初めから強かったわけじゃない」

「努力、したんじゃろ?」

「…あぁ」

仁王は空に浮かぶ雲に目をやった。

ふわふわと浮かぶ雲はとても暢気そうだった。

「…お前の名前は?」

「仁王雅治じゃ」

「…変わった喋り方だよな」

「チャームポイントじゃよ」

「変な奴…」

跡部は小さく笑い声を漏らした。

楽しそうに笑った跡部の顔に、仁王は頬を染めた。



















しばらくそうして時間が過ぎた。

と、突然跡部が立ちあがる。

どうかしたのか、という目で仁王は跡部を見上げると跡部はコートの方を見る。

といっても、コート自体はここからは見えなかったのだが。

「…そろそろ試合、終わったみてぇだ」

「え…?わかるんか?」

「何となく…」

「…変わっとるのぉ」

「お前に言われたくねぇよ」

ズボンについた芝を両手でパタパタ叩き落とす。

そして仁王の方を向き、にっこりと笑った。

「また、会えるといいな」

お前と喋るのは面白かった。

そんな言葉を仁王に投げかける。

仁王も立ちあがり、笑みを返した。

「そうじゃね、…絶対また会おう?」

そう、軽く右手を振りながら言った。





「じゃあな…」

「またな…」





それが最後の言葉。



それから、二人は、正反対の方向へと歩いて行った。





































それから、約1年…。



「思えば俺、あん時の跡部の試合を見て跡部に惚れたんじゃよ」

黒のソファに座り、仁王は呟いた。

「…俺はきっと、試合後にお前に話しかけられた時だな」

仁王の肩に寄りかかり、跡部は言った。

その身体を、仁王はそっと抱き寄せる。

「嘘吐きんしゃい…。初対面の純粋な少年に向って“白髪”って言った癖に…」

「照れ隠しだ。…そんぐらい気が付け」

「はいはい、すまんかったのぉ…」

クスクスと笑って仁王は跡部の髪に顔を埋めた。

薔薇の、甘い香りがした。

「ま、あの時は気付かんかったけど…今は跡部の事ならなんでも分かる」

「当たり前だろ」



だって…。





「恋人同士なんだからよ…」





幸せそうに呟いた言葉。


嬉しくなって、思わずキスを一つ。




きっと、俺達は

     出会った瞬間に“こうなる”運命だったんだ。















〜END〜



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●あとがき●

パラレル以外で初の仁跡(仁)ですv
ギャグにするつもりがほのぼのになってしまい残念…。
次回はギャグ調の「仁王vs跡部!攻受分け目の戦い!」を書きたいなぁv(馬鹿)
…私がギャグかいても微妙になりそう(死)