聖なる夜に





















『明日、俺の家に来いよ!泊まりでだ!!』

「無理だよ」



12月23日の夜。

突然淳のもとに跡部から電話がかかってきた。

電話越しに聞こえてくる跡部の声はいつものように自信たっぷりのようで…。


『なんだとっ!?俺様が来いって言ってるのに…お前それでも俺様の恋人かっ!?』

怒鳴り付けてくる跡部に淳は眉をひそめる。

「いきなり電話してきて泊まりで来いなんて言われても困るよ」

淳はおもいっきり不快そうに言う。

『テメェは当日にいきなり電話してきやがるだろーが!!』

「僕はたまにしか我が侭言わないからいーの」

『どういう理屈だよ!いいから来い!!』

「あのね、明日はクリスマス・イヴの夜は聖ルドルフ学院敷地内でイベントがあるからさ」





聖ルドルフ学院は都内でも有数の有名宗教学校だ。

学院敷地内には教会もあり、毎年クリスマス・イヴにその教会でキリストの誕生の前夜祭としてミサが行われるの
だ。

もちろん、生徒会副会長である淳はこのイベントを手伝いをしなくてはいけない。





「……ってワケで、無理」

『………………………………』

「…跡部?」

『わかったよ!!』



ガチャッ

ツー…ツー…ツー…





「切れた…」

跡部は人一倍プライドが高いからきっと怒ってしまったか…拗ねたのか…。(おそらく後者)

こういった事は珍しい事ではない。



ー…まぁ、そういうところも可愛いのではないかと思うあたり自分はもう末期なのだろうか?



他校同士で付き合っているのだから、お互いの予定は滅多に噛合わない。

けれど……。

「やっぱり、クリスマスの誘いを断ったのはまずかったかなぁ…?」















誕生日・クリスマス・バレンタインと言えば恋人達の三大イベント。

そのうち跡部の方の誕生日は跡部が修学旅行中だったため会うことができなかった。

淳の方の誕生日は期末試験が近かった。

もちろん受験生としては2学期期末のテストを疎かにするわけにはいかない。

跡部は「期末なんで楽勝だろ、アーン?」なんて言っていたが淳はそういうワケにもいかず…結局、跡部が寮の方に
不法侵入してプレゼントを渡し、数分会話を交わしただけで終わった。

淳だって跡部に会いたくないわけではない。

なんだかんだいって二人は想いあっているのだから…。

けれども、今回のミサはキリストの誕生を祝う前夜祭。

それを生徒会の副会長が恋人と会うために休むだなんて他の生徒に示しがつかない。





ふぅ…と淳は深く息を吐く。

そしてそのままベッドに倒れ込んだ。

ふかふかとしたやわらかなベッドは淳を優しく包み込む。

淳は瞳を閉じる。



―明日は朝から準備をしないと…



跡部の事は気になるが今はそれよりも明日の事が最優先だ。

そう割り切り、淳は眠りについた。































「…それで、割り切ったのならどうしてそんなに不機嫌そうな顔をしているのですか?」

次の日、生徒会長である観月と副会長である淳は一緒にミサの準備をしていた。

落ち着いた感じ教会。

ステンドグラスは太陽の光を受け美しく透き通っている。

「別に…不機嫌じゃないし…」

「だったらその眉間の皺を何とかしたらどうですか?ずっとそんな顔していると青学テニス部の誰かさんみたくなってし
まいますよ」

「……」

「……跡部君の誘い、断ったんでしょう」

観月の言葉は疑問ではなく確認。

「……別に、観月に関係無いでしょ?」

淳は気付いていないだろうが、さっきよりも刺々しくなっている口調。

そんな淳を見て、観月は深い溜息をつく。



―どうして、こう意地っ張りなんでしょうかね…



「…まぁ、良いでしょう。とにかく、今日は大事な日なのですからくれぐれも私情をはさまないようにしてくださいね」

それだけ言うと、観月はシスターの元ヘと向って歩いて行った。

誰もいなくなった教会に1人佇む淳。



「…………跡部…」



その呟きは広い教会に虚しく響いた。






























午後六時。

いよいよ聖ルドルフ学院でミサが行われようとしていた。

聖ルドルフは小等部、中等部、高等部、そして大学部と分かれている。

こういったミサが行われる場合、小等部から大学部までの全ての者が集まるのだ。

いや、全てと言うのには語弊があるかもしれない。

聖ルドルフの小等部、中等部、高等部の冬休みは他の学校よりも2・3日早い。

なので寮生は実家に帰っている者も多く、このミサは参加したい者だけが集うのだ。


「今回は結構集まりましたね」

「………そう…だね」

「淳…まだ諦めきれてないのですか?」

「………」

「さっきも言ったでしょう?聖ルドルフ学院中等部の生徒副会長であるあなたがそんな様子ではせっかくのミサも台無
しになってしまいます」

「…わかってるよ」



―そう…、わかっている事だけど…でも…っ!



そうこうしているうちにいつの間にか辺りは静まり返り、牧師さんが話を始めた。

その話に静かに耳を傾けていると心が安らいでくる…。

そう、教会に集まった生徒が話に聞き入っていた……



その時…






バンッ





突然教会の扉が開く。

冷たい風が教会内に入りこむ。









「淳っ!!」









聞きなれた…低い美声…。




まさかと想い、扉の方に目を向ける。




「跡部……?」




戸惑いを隠せない淳に一直線に歩み寄ってくる跡部。

「どうして…ここに?」

驚く淳の目の前まで来た跡部は淳の腕を引っ張った。

バランスを崩し倒れそうになる淳を支え、抱きついて跡部は言った。






















「お前を攫いに来てやったぜ!」







「…はぁ?」



















「じゃあ、行くか!」

「へ?……って、うわぁっ!!」

思い切り跡部に腕を引っ張られ変な声を上げてしまった。

「ちょ…ちょっと、跡部!?」

淳の制止の声も無視し、跡部はそれまでの事の成り行きを淳の隣で唖然と見ていた観月に目を向ける。

「ってなわけで、コイツを借りてくぜ」

「ちょ…待ちなさいっ!!」

「じゃあな」

そして跡部は淳の腕を引っ張り、走って教会の外ヘと出て行ってしまった。






























「ここまで来れば平気だろ」

あの後、2人はルドルフからかなり離れた人気のない公園に来ていた。

辺りはもうすでに真っ暗だ。

跡部は、ケータイを取り出してなにやら電話をし始める。

「今、迎えを呼んでおいた」

ケータイを切り、淳に向き直る。

「……何不機嫌そうな顔してんだよ?」

「…あんなにドハデに来る事ないじゃない…」

絶対に観月に怒られるよ。

そう毒づく淳に跡部は眉をひそめる。

「もとはといえばお前が俺様の誘いを断るからだろうが!」

「断ったのに無理矢理来て連れ去る?普通…」

溜息をつき跡部から目を背ける淳。


……んだよっ


「…え?」


かすかに聞こえた声に淳は跡部の方に向き直った。
















「会いたかったんだよっ!///」
















「あ…とべ?」

暗闇でよく見えないが、跡部の顔は赤く染まっている…ような気がする。

「大体俺様が恋人同士のイベントにお前に会えないで「はい、そうですか」と大人しく引き下がるわけないだろ、アー
ン?」

「くすっ…跡部、相変わらず自分勝手……」

「うるせぇよ///…お前は会いたくなかったのかよ」

「くすくす…そうだなぁ」

淳は跡部の背に手を回し抱き付く。













「僕も……景吾に会いたかったよ」











恋人達は誰もいない公園の中で抱き合い、静かに唇を重ね合わせた…。


いつの間にか、白い宝石が天空から地上ヘと舞い降りてきていた。



まるで…想いの通じ合った恋人達を祝福するかのように…。






















〜終〜



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●あとがき●

はいっ、20日近く遅れてのクリスマス小説です!!
色々ごめんなさい…本当にごめんなさい;
「とにかく百合で」というリクエストに答えてみました。
…どうでしょう?ここまでマイナーなCPになるとは自分でも思いませんでした。(ぇ)
良いじゃんか、二人とも大好きなんだもんよ・・・。
ちなみに、これは淳×跡部でも跡部×淳でもどっちでもいけます。つまりは淳跡淳です!(待て)
もしくは淳&跡部でも構いません。
お好みのほうでどうぞv
クリスマスという素敵なイベント(しかも遅れてUP)でこんなものを書いてしまって本当にすみませんでした!;