痴話喧嘩










お洒落な雰囲気の喫茶。

壁は一面ガラスで外の明るい光が店内に差し込む。

店内の奥、植木が囲んで死角になるところ。

この店の雰囲気とはまったく合わず、ピリピリとした空気を放っている場所。

そこに向かい合って座っているのは…。



「……なぁ、まだ怒ってるん?;」

「当たり前だ」

キッパリと言い放ち、跡部は先程運ばれてきた紅茶を一口啜る。

少々乱暴に置かれたティーカップが音を立て、波紋が立つ。

そして目の前に座る人物を睨みつける。

いや、忍足というよりは…この場に居ない誰かに向けて、なのだろうが…。

「…先に約束したのは俺の方なのにっ」

ぷい、と目線を窓の外にやる。

怒っている、というよりは拗ねている様なものなのだろう。

「で、まだ病院に居るん?」

「…ああ。多分な」

気に食わねぇ、とばかりに舌打ちをする。

「何かあるとすぐに幸村、幸村って…」

「仕方ないやろ、立海の部長さん病気で入院してて大変なんやし」

「だからって俺様との約束を破ってまで見舞いに行かなくてもいいだろ!?」

哀しそうに瞳を揺らす跡部を見て忍足はこっそり溜息をついた。










真田はずるいと思う。

跡部の身も心も独占しておきながらこんな風に、彼を不安にさせる。

不安になるのは真田を想うからこそ。

こんなにも跡部は真田を想っているというのに…。


何故彼を一人にする?







「…さっきから跡部のケータイ、鳴っとるで?」

「……」

「出んでええの?…真田やで、きっと」

「…知るかよ」

一度拗ねてしまった跡部が素直に電話に出るとは思えない。



ーほんま、こんな下らん喧嘩に俺を巻き込まんで欲しいわ…



何を思ったか、忍足はふいに席を立つ。

立ち上がった忍足を下から見つめる青の瞳。

「ちょっとトイレ行って来るわ。好きなもん勝手に頼んどっても構わへんよ」

跡部に背を向け、トイレに向かう。

後ろでは不思議そうにしながらもウエイターを呼ぶ跡部の声が聞こえた。
















それからしばらく時が過ぎた。

「遅いな、忍足…」

ぼぉ、と窓の外を見ながら呟く。

少し前から着信を知らせ続けていたケータイが沈黙した。

あんなに楽しみにしていた約束を破ったのだ。

電話越しの謝罪など聞きたくない。






姿が見たい。

直接声が聞きたい。

あの逞しい両腕で抱きしめて欲しい。


「愛している」と耳元で囁いて欲しい。





女々しい想いを持つ自分が嫌になる。

謝罪も聞かず、勝手に拗ねていじけて…。

いつからこんな"恋する乙女"になってしまったのだろう。

机に肘を突き頬を支え、俯く。

そして唇を動かした。

「…真田のバーカ」






「馬鹿で悪かったな」






突然頭上から声が降ってきた。

「な…っ!?」

驚いて見上げてみれば…。

「何を拗ねている。ほら、早く来い」







何って…お前が約束破ったのが悪いんだろーが。


俺と幸村、どっちが大事なんだよ。


バカバカバカ…ッ!








言いたい事は山ほどあった。

次、顔を合わせたら殴って、「嫌い」って怒鳴って…。

色々考えていたのに。

「遅くなったが、今から行かないか?」

真田がそんな風に困ったように微笑むから。

手を、差し伸べるから。

「…仕方ねぇから、行ってやるよ」

真田の大きい手に自分の手を重ねる。

瞬間、手を引かれその、両腕に暖かく抱き締められた。

「すまなかった」

「謝罪なんて今更聞きたくねぇんだよ」

「……愛しているぞ」

「っ//…バーカ///」

真っ赤になった顔を見られたくなくて、照れ隠しに思いきり抱きついた。





























「…やっと行ったんか」

ケータイを握り締め、トイレのドアに凭れ掛かっていた忍足に気づくことなく。

窓の外には仲良く肩を並べ歩く一対の姿が見えた。

「何で俺が恋敵の仲を、…それもワザワザ居場所まで教えてまで取り持ってやらなあかんのや…。」

馬鹿やな、自分…。

跡部の幸せそうな表情が視界に映る。

その隣で跡部の髪を優しく撫でながら何か話しかけている真田の姿を捉える。

「次、こんな風に跡部を不安にさせたり泣かしたりしよったら……」



絶対にそこにつけ込んで跡部を奪ってやるから。




覚悟しときぃ、真田。








〜END〜


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●あとがき●

初★真跡です!!
ところで…これ乙部ですか?;
あれー?しっかりお題に沿ったつもりだったんですけど;
つーか忍足出張り過ぎ!!
次、ちゃんとリベンジしたいです!;