仁王と跡部の合戦 Part 2
















家の中はますます異世界だった。

本当に、どこかのお城に来たかのよう。

紅い絨毯が敷いてある。

天井は異常に高い。

そしてそこにあるシャンデリアは有り得ないぐらい豪華。

キラキラとライトに照らされ光っている。

仁王は玄関に一歩踏み入れただけでもう固まってしまった。

「おい、どうしたんだ?…さっきから、もしかして具合悪いんじゃねぇか?」

「…だ、大丈夫じゃよ」

心配そうな跡部の視線を受けるも、仁王はなんとか笑顔を貼り付ける事に成功する。

しかし、その笑顔も長くは持たなかった。



「あら、景吾…お友達かしら?」



突如聞えた声に二人は声の方を振り向く。

赤い絨毯が敷かれた階段をゆっくりと一人の女性が降りて来た。

茶色に少し金色掛った髪の色。

白く輝く肌は東洋人とは思えない。

目の色は薄茶色で赤い唇は弧を描いている。

年齢は…20代前半だろうか?

今までに見た事のないような美女に仁王は呆然と跡部の隣に突っ立ったままだ。

跡部はというと女性の顔を見るなり柔らかい笑みを浮かべた。

「どうしたんですか?今週はヨーロッパの支社を回ると聞いていたのですが…」

「少し用事があってね、家に寄ったんだけど……まさか景吾のお友達に会えるとは思わなかったわ」

紅薔薇のような美しさで白百合のように柔らかな微笑みを仁王に向け浮かべる女性。

その距離は何時の間にかあと数歩のところまで迫っていた。

「は、初めまして…仁王雅治と申します…です」

「仁王は神奈川にある立海大付属の生徒なんですよ」

「ということはお住まいは神奈川?遠いところからようこそいらしてくれましたね」

「は、はい…っ!」

思わず変な敬語になっている仁王を跡部は苦笑いしながらフォローする。

女性はといえば微笑を崩さずに話し続ける。





「…あら、そろそろ私は行かないと…。じゃあまたね、景吾、マー君v」

「「マー君っ!?」」

「そう、“雅治”だから“マー君”よ」

ふふっ、と笑い声を漏らしながら女性は手を振り玄関から使用人を連れて出て行ってしまった。

後に残された二人は呆然と、特に仁王はもはや心がここには無いようであった。

何とか気を取りなおし、二人は廊下を再び歩き始めた。

「……ごめんな、仁王。変わった性格で吃驚しただろ?」

「……ははっ、美人なお姉さんがおるんじゃねぇ」

苦笑いを浮かべ仁王が返事をすると跡部は申し訳なさそうに呟いた。

「あれ、俺の母親なんだ……」

今度こそ仁王は何もいう事ができなくなった。





































そんなこんなでようやく跡部の部屋についた。

金のドアノブに手を掛けゆっくりと扉を開いた。

すると想像していた通り、仁王の部屋の何十倍もの広さだ。

さらに有り得ないのがそのインテリア。

「…この部屋のインテリア、全部売ったらいくらになるんじゃろ」

仁王の口から出た一番初めのコメントはいかにも庶民らしい言葉だった。

「さぁな…。俺が買ったわけじゃねぇからわかんねぇよ」

「そうじゃろな…」

「仁王、飲み物持って来るからその辺に座ってていいぜ」

部屋を出ていった跡部に見向きもせず、キョロキョロとみっともなく仁王は首をまわして部屋の中をみる。

花瓶に時計、スタンドにソファ…。

どれも美しく立派なものばかり。

感心してあたりを見渡していると、仁王の目に飛び込んできたのは…。

「…大きいベッドじゃね」

天蓋付きの、キングサイズ。

いや、キングサイズというものは実際見た事がないが…。

「俺の部屋より大きいみたいじゃ…」

5人以上寝ても平気そうなくらいの大きさ。

まだ触ってないが見た目でフカフカだという事が分かるほどに柔らかそうな布団。

恐る恐る近づき、薄い布を掻き分けベッドの上に座った。

思った通り、柔らかい。

その感触を楽しんでいると、ふと、何かに気がついた。

「…跡部はいっつもここで寝とるんじゃよな」

枕に顔を埋めるように、うつ伏せになって寝転がる。



ーうわっ、甘い香りがするんじゃけど…



布団や枕から薄っすらと跡部の香りを感じる。

そして瞼を閉じれば…。














『は、…あぁっ、…んぅ』


『随分と甘い声出すんじゃね、景吾は』


『あっ、…仁王、っん』


『景吾…。なぁ、“雅治”って呼んで欲しいんじゃけど』


『…ま、さはる……ぁっ、もう…!』


『可愛え…景吾』















「…なーんてのぉ、ふははっ」

両腕で強く枕を抱き締める。

表情は、見ているこっちが情けなくなる程に歪みまくっている。

端から見たら変態以外の何者でもない。

「せっかくじゃし…跡部の香りをもっと堪能するかのぉ」

変態極まりない発言をしながら深呼吸(主に吸う方)をする為息を吐き出した。











「仁王!オレンジジュースで良かったか?」


「!…ゲホッ!!」












瞬間、跡部が部屋に戻って来た。

突然声が掛った事に驚き仁王は思わず咽てしまい…。

「…ベッドじゃなくてソファに座ってても良かったのに」

跡部は不思議そうに首を傾げた。

ベッドの傍にある、これも柔らかそうなソファ。

確かに普通に考えれば座るべきは此方なのだが…。

「あはは…まぁ、気にするんじゃなかと」

「?…まぁ良いけどな」

少し名残惜しそうに跡部の甘い香りのする柔らかいベッドから降り、跡部の元に向かう。

今度はソファに座るように促される。

テーブル上に置かれたグラスを手に取る。

オレンジジュースをグラスの半分くらいまでを量をグッと一気に飲む。

冷えたジュースが喉を潤す。

グラスの中に入っていた透き通った氷も一緒に口に入れ噛み砕く。

先程の妄想で熱くなった頭を冷やすように…。




「なぁ、悪いんだけど…」

「へ?なんじゃ…?」

「今夜寝る場所、俺と一緒でもいいか?」

「……と、いうことは…さっき俺が乗ってたベッド?」

「あぁ、アレ」




せっかく氷で冷やし、消えた筈の熱が再び仁王の脳細胞を襲った。



今夜は、眠れそうにない…。

















〜続〜



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●あとがき●

久々に更新…。
段々私の頭が壊れてきました。(前からです)
仁王が段々馬鹿…というか変態になってきたのも問題かと。