卒業 〜Wait a little more...〜

















桜が咲くにはまだ早い。


少々肌寒い風が吹いている。




「見事な答辞でしたね、跡部先輩」

振りかえるその姿は最後に見たときよりも少し、大人に見えた。

しかし、彼の服装は見るも無残なもの。

「さすがですね。…ボタンどころかネクタイも、シャツのボタンすらありませんね」

「あぁ…ったく、限度ってもんを知らねぇのかよ。……ま、この制服着るのも今日で最後だけどな」

「卒業生も……在校生までも、跡部先輩の答辞に感動して泣いてましたね」








そう、今日3年生の先輩方は卒業した。

卒業と言ってもこのままエスカレータ制で高等部に上がっていく先輩達が多い。

跡部先輩をはじめ、正レギュラーの先輩方は全員このまま氷帝学園高等部に進学するらしい。

だからまったく会えないわけではない。

月に一度は中等部と高等部のテニス部の交流試合があるし、暇な時には練習を見に来てくれるとも約束してくれた。




けれども…。


「もう校舎内で偶然擦れ違ったり…一緒にお昼を食べたり、出来ないんですね」

今までよりも会う機会がかなり減ったのも事実。

居るのが当たり前。

そう思っていた人達が、居ない。

「……寂しいです」

下を向き、目に込み上げる熱いものをぐっと堪える。







ステージで凛とした態度で話すあなたを見て。


泣かない。

そう、心に決めた筈なのに。







「バーカ、何言ってんだよ。…次はお前達が最上級生だぜ?寂しいなんて言う暇はねぇよ」

「でもっ……会えなくなる。今まで当たり前のように一緒に居たのに…」




悲しい。そう思っては駄目ですか?







「……何も、悲しいのはお前だけじゃねぇだろ」



「え…」

顔を上げると、跡部先輩は俯いていた。

目の端の"何か"が、高く昇った太陽の光りで反射している。

「跡部せんぱ……ぃ」

頬に触れようとし、腕を伸ばした。

しかしそれを阻むかのように軽く握った拳でとん、と胸を軽く叩かれた。

そして、そっと顔を上げた。

跡部先輩の見上げた視線と俺の視線とが絡む。

頬には一筋の濡れた線。

しかし唇は弧を描いて…。







「1年待ってやる。…その間にもう一回りでっかくなってろよ?」






「…ッ、はい!!絶対…今よりも強くなってあなたを越えて見せます!!」

「ふ、楽しみにしてるぜ」


遠くから誰かが跡部先輩の名前を呼んでいた。

恐らく向日先輩か宍戸先輩あたりだろうか。






「じゃあ……また、な」


「はい。では…また」




背を向けて、ゆっくりと歩いていく。

そのまま彼の後姿が見えなくなるまで、ずっと見ていた。



そして、想う。









「絶対に…もっと強くなります。だから……」

















1年間、待ってて下さいね。


必ず、そこに行きますから……。







来年の、桜咲く…その季節に。









〜END〜




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●あとがき●

せっかくなので3月らしく卒業ネタです。
本当は忍跡にしようかとも思ったんですけど…やっぱり先輩・後輩でしたほうがいいかなーと。
でもそれだと樺地だと無口過ぎだし、日吉は何だかなー…。と思ったのでここは先輩思いの鳳にしてみました。
……実は鳳跡も大好きですv(跡部受に関してはかなり雑食)
あと壁紙、初めて写真にしてみました。
今までは背景を固定するのが面倒だったのでやってませんでしたが…。ちゃんと固定されてるでしょうか…?;