唯一無二の幸
チ、チ、チ…。
ベッドの上の方に置いてある目覚まし時計の規則的な秒針の音が微かに聞える。
それよりもっと近い位置。
規則正しい寝息を立てる恋人に思わず笑みが零れた。
チラリと時計を見れば現在、AM0:26。
日付を見れば、10月15日。
忍足侑士の15歳の誕生日だった。
日付変更と同時に祝ってやる、と言っていた恋人は夢の中。
つい1時間程前まで、二人の体は深く絡み合っていた。
加減をしてやるつもりだったのだが、若いせいか思わずその場の雰囲気と自分の熱に流され強引に抱いてしまった。
きっと起きてから文句を言われるに違いない。
それでも、今、この瞬間に幸せな気分でいる忍足には関係無かった。
「ん…、ぅ」
隣から小さな声がした。
身動いだせいでベッドが微かに揺れた。
起こしてしまったかと慌てて隣で寝ている跡部の顔を覗き込んだ。
忍足の心配を他所に跡部の寝顔はとても安らかなものであった。
蜂蜜色の髪がシーツを彩る。
月明かりで輝いて見える白い肌。
ふっくらとしたチェリーピンクの唇。
残念ながら瞳のその美しい蒼は、瞼で覆われ見られない。
しかし、長い睫毛がピクピクと振動し揺れる様はとても愛らしく感じられた。
去年…まだ、跡部と付き合っていなかった頃。(もう既に、忍足の方は跡部に片想いの状態だったのだが)
忍足は初めて東京で祝う自分の誕生日を部活のメンバーと過ごした。
ジローや向日などお祭り騒ぎが好きなメンバーはもちろんの事、跡部もその中の一人だった。
部屋の扉を開き、メンバーの中に跡部が居たときには酷く驚いた。
折角のチャンスだと、さり気無く跡部の隣を奪い話し掛けた。
跡部はただジローに無理矢理連れてこられただけだと言っていたが、それでも嬉しかった。
好きな人と過ごす誕生日はこんなにも幸せなのだと、思った。
そして、出来るならば……。
「来年は、二人きりで過ごせたらえぇんにな…」
賑やかなお祝いが終り、静けさが妙に寂しく感じた部屋の中で、ポツリと月に向かって呟いた。
でも、まさか…。
「本当に叶うとは思ってなかったわ…」
当たって砕けろ、という勢いで告白をした。
気持ち悪がられても、嫌がられても、それでも仕方が無い。
日々、溢れていく跡部への想いをどうしても止められそうにはなかったから。
「ふざけるんじゃねぇ」と罵られるかと思ったが、良い方に予想が外れた。
忍足からの告白の言葉を聞いて跡部は顔を真っ赤にさせて戸惑っていた。
始めてみる表情に「得したなぁ…」なんて暢気に考えていた忍足だったが。
「…俺も、忍足の事好きだった」
小さく、それでも届いたその言葉に今度は逆に忍足が真っ赤になってしまった。
さらには跡部に「お前のそんな顔、初めてだ」とまで言われ、笑われた。
それでも今となっては大切な思い出だ。
跡部の寝顔を見つめながら思いを馳せていたが徐々に眠気が襲ってきたのか、一つ小さく欠伸を漏らした。
俺も寝るか、と跡部と自分の体に掛っている布団を引っ張る。
そして寝転がろうとしたその時に、再び跡部が身動ぎをした。
向こうをむいていた跡部の顔が、忍足と向かいあった。
ドキリ、と心臓が大きくなった。
サクランボの唇が、ゆっくりと動く。
「…ゅ、し……、すき…」
本当に、耳を澄まさなければ聞えないほどの大きさの寝言。
開いた唇が閉じる…その直前。
忍足の唇が跡部のそれをそっと塞いだ。
ほんの、数瞬。
それでも甘い味が感じられた。
幸せそうな表情で眠る跡部の柔らかな髪をひと撫でする。
「ありがとう…景吾」
出来る事なら、来年も一緒に……。
産まれてきて良かった。
貴方に出会えて…。
本当に、幸せです。
〜終〜
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●あとがき●
忍足はっぴーばーすでぇい!!良いなぁ、永遠の15歳は(笑)
誕生日小説、1時間ちょいで書き上げました…;
跡部が忍足にあげるものが想像つかなかったのでこんな形になりました;
最近長い文章が書けなくなってきてるかも…。スランプか?(ぇ)
※ちなみにこの小説はFD小説なのでどうぞご自由にお持ち帰り下さいw
連絡は不要ですが…してくださると嬉しいです!
サイト掲載も全然OKですが異界が書いたことは明記しておいてください。

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