十年後



















俺には幼馴染が居る。

名前は跡部景吾。

天然の蜂蜜色の髪で、サファイアみたいな瞳を持ってる。(サファイアなんて本物、見た事ないけど)

異国の血が少々混じっているらしく肌の色は日本人と比べ明らかに白い。

まるで、月みたいな美しさを持つ奴だ。


俺らは、ずっと昔から一緒だった。























「けぇごなんかだいきらいだっ!!」

そう叫んで、宍戸はその場から逃げるように走って行く。

後ろから仲良しのジローがなにか叫んでいる。

跡部の泣き声が聞える。

それでも構わなかった。

宍戸は、小さな体をひたすら動かして三人の前から姿を消した。










幼い宍戸が起こった理由は大変子供らしいものだった。

いつものように公園で宍戸と跡部とジローは遊んでいた。

宍戸はいつもと違い少しそわそわしていた。

今日は宍戸の5歳の誕生日。

仲良しのジローは公園に来てすぐに「おめでとう」と祝ってくれた。

けれども、肝心の跡部からはまだだった。

仄かな恋心を跡部に対し抱いている宍戸は、大切な両親よりも、仲良しのジローよりも、跡部に祝いの言葉を言って
もらいたかった。

しかし…いつになっても跡部は宍戸に「おめでとう」という気配がない。

痺れを切らし、思わず宍戸は跡部に尋ねた。

「…なぁ、けぇご。おれ、今日たんじょうびなんだぜ?」

小さな声で、それでも隣で一生懸命砂を弄っている跡部にはしっかり聞こえる声で言った。

すると跡部はきょとんとした顔で首を傾げる。

「りょうくん、たんじょうび…だったの?」

そして、宍戸は叫び公園から姿を消した。

































「…けぇごのばーか」

住宅街を少し歩いた先にある、もう一つの公園に宍戸は辿りついた。

公園といってもアスレチックは見当たらず、小さな丘と木がいっぱい生えている場所。

その中でも一際大きい木の根元に宍戸は座り込んだ。

大好きな跡部に自分の誕生日を覚えてもらっていなかったことが相当ショックだったらしい。

もう少しで泣きそうだったが、それは何とか食い止めた。

それともう一つ…。

「けぇごのこと、“だいきらい”っていっちゃった…」

誕生日を覚えてもらっていなかった事よりも、思わず自分の口から出たその言葉に後悔の波が押し寄せ、小さな体を
飲み込んで行く。

しかも、跡部は泣いていた。

大好きな子より一つ大きくなって、「これからはおれがけぇごをまもる」と思っていたのに。

守るどころか傷つけてしまったという事実が5歳になったばかりの宍戸を追い込んで行く。

「…やっぱり、あやまらないと」

目尻に薄っすら浮かんだ涙を手の甲でごしごしと拭い、立ちあがる。


と、その時。

前方から見なれた金色の髪と蜂蜜色の髪が見えた。

ジローと跡部だ。

二人はそのまま固まったまま宍戸の傍まで歩いてくる。

近づくにつれ、跡部の表情が良く見えるようになる。

目が、真っ赤だった。

きっとあの後もずっと泣いていたのだろう。

ツン、と胸が痛んだ。

慌てて宍戸が謝ろうとした時、跡部は俯いていた顔を上げて宍戸をじっと見つめた。

思わず、言葉を飲み込んだ。

「りょうくん、ごめんね?けぇご、りょうくんのたんじょうびわすれてた…」

段々と声が小さくなり、再び泣き混じりの声になって行き宍戸はうろたえる。

ジローは跡部の肩を抱き「なかないで、ちゃんといおう?」と優しく声を掛けている。

すると跡部は小さく首を縦に振り、再び言葉を一生懸命に紡ぎ始めた。

「あのね、このまえまでちゃんとおぼえてたの。でも、きょうはカレンダーみなかったの。…だから、わすれちゃった」

跡部は頭が良いのに何処か、抜けているところがある。

宍戸もそれは十分にわかっていた。

「だからね、…けぇごのこと、きらいになっちゃやだ……」

そこまで言うと耐え切れなくなったのか、跡部は再び泣き出してしまった。

目から次ぎから次へと流れ出す涙を跡部の小さな手はつたない動きで拭う。

ジローはその姿を見て満足そうに微笑むと、宍戸へと視線を向けた。

「りょうも、なんかいってあげて?」

立ち竦み何も喋らなかった宍戸はそこで、跡部との距離をさらに縮めていく。

そして、すぐ傍まで来るとその短い腕で悲しみで震える跡部の体をぎゅっと抱き締めた。

「…きらいになんかならない。おれ、けぇごがだいすき」

しっかりとした口調で跡部に伝えれば、涙で濡れた顔を跡部は上げる。

「ほんとう…?」

「ほんとう。…ごめんな、けぇごのことかなしませて」

宍戸の方からも謝ると、ようやく跡部は悲しみで歪ませていた表情を柔らかなものへと変えた。

そして、頬を染め照れくさそうにしながら。

「…いまからでも、おめでとう、いっていい?」

「うん、けぇごからいってほしい!」

元気良く宍戸が返事をすれば跡部は小さな手で宍戸の胸辺りの服を掴む。

「りょうくん、おたんじょーびおめでと…」

同時に、くい、と服を引っ張り宍戸を引き寄せ。





ふにっ





「え………?」

「……おいわいの、ちゅう」

顔を真っ赤にさせながら跡部はふわふわの唇を宍戸のそれと重ね合わせた。

横からジローの「いいなぁ」という羨ましがる声が聞える。

状況がわかってくると宍戸は顔を茹蛸のようにさせながら自分の唇に手をやった。

「ありがとう、けぇご!」

そして、酷く嬉しそうに言った。

「また、ちゅうしてくれるか?」

図々しくも頼んでみれば、跡部はんーっ、と考えた後ににっこりと笑い。


「また10さいおおきくなったらしてもいいよ…?」








5歳の誕生日、ある公園の木の下で。

大好きな子としたファーストキスは、少ししょっぱい味がした。


















































何処か遠くから自分の名を呼ぶ声が聞え宍戸はゆっくりと瞼を上げる。

木の葉と木の葉の間からキラキラとした光が眩しい。

「おいっ、宍戸!!暢気に昼寝とは良いご身分だな」

宍戸が声の方向に少し顔を向ければ跡部が不機嫌そうな表情で見下ろしていた。

「あー………おはよ」

「“おはよ”じゃねぇ!…ったく、俺が探してやってるっていうのによ」

ブツブツ文句を言いながら跡部は宍戸が寝転がっている隣に腰を下ろす。

そしてそのまま何をする訳でもなく二人でぼんやりと景色を見ていた。

「…そういや、お前。今日誕生日だよな」

「………そういやそうだな」

跡部が唐突にそう切り出す。

宍戸は寝起きで上手く働かない頭をゆっくり動かし、返事をした。

その返事を聞き、跡部は宍戸に上半身を起こすように言った。

段々覚醒してきた宍戸は「ダリィな」などと言いながらもしっかり跡部の言う事に従っている。

でも、その表情は何か嬉しそうで。

跡部の表情は、何処か幸せそうで。

そして、お互いの視線がちょうどぶつかり合う。







「……誕生日おめでとう、亮」














15歳の誕生日、学園内の木の下で。


大切な恋人とした深い長いキスは、とてもとても甘かった。
















〜終〜



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●あとがき●

宍戸誕生日おめでとう!!!(嬉)
宍戸は格好良くて大好きなキャラですv
私の書く小説に良く出るのもそのせいかと…(笑)
にしても、これで宍跡小説ようやく2作目です。
結構書きやすかったりするんですよね、宍戸と跡部って。
今回は何より子跡部が書けて満足です!!
…子跡部はリクエスト貰ったんでv(内容とはかけ離れてる気がしますが;)
ではでは!本当におめでとう、宍戸!!